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アイヌの歴史と文化2



アイヌの歴史と文化2
遥かな縄文の記憶、精神史の古層を突き破って北の窓に出現する新たな日本。アイヌ とは、蝦夷とは、日本人とは。渾身の問いが国民国家の虚構を突き、われらの古い歴史像は砕け散る。北からの叫びに世界が呼応する。
●定価 2,200円(本体2,000円+税)
●B5判・並製本/236頁(オールカラー)
●写真・図版・表/472点
発行所/株式会社 創童舎
在庫あり:1〜3営業日でお届けします
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内容

 アイヌ民族の歴史と文化に関する論考24本と萱野茂・赤坂憲雄の対談「アイヌ文化と東北の文化」を収録する。

 1が歴史学・民俗学中心の構成とすれば、2ではさらに人類学・社会学・文学・言語学・博物館学など隣接諸分野の論考を多く加え、より多角的な視点と方法とにより「アイヌの歴史と文化」にアプローチしている。

 たとえばアイヌ文化におけるイオマンテ=クマ送りには伝統的世界観が集中的に表現されているが、この儀礼はユーラシアから北米までの広がりをもつ。一方でその儀礼的発展には、周辺の諸民族や国家における熊皮や熊胆の需要、つまり交易上の必要という交換経済上の背景も指摘されている。

 熊に限らずアイヌ民族の鳥獣・海獣類の狩猟目的は、彼等の「周辺」との交流という視点から考察するとき、そこには自給品獲得というより、むしろ交易品の確保という側面が濃厚であるという。山丹交易では元・明・清王朝下でラッコやクロテンの毛皮が重要であり、ヤマトの中・近世国家との交易では鷹や鷹羽・山丹交易品の蝦夷錦・鹿やアザラシ皮・鮭などが重要であった。

 またアイヌ社会内部や環オホーツク民族との交易では、大陸王朝やヤマト国家から入手した青玉・鉄なべ・小刀・漆器・酒などが取引された。要するにアイヌ民族の性格とは、第一に「交易の民」なのであり、アイヌ社会の内的変化や文化の発展もまた、東北アジアにおける周辺地域との関係・交流に深く規定されていたものと見ることができる。

 1・2巻が揃ったことにより、数百点におよぶ貴重なアイヌ文化関連の写真・図像資料がまとめて参照可能となった点も有意義である。蠣崎波響・平澤屏山・谷元旦らによる「描かれたアイヌ」の姿は、史料としての複雑性・問題性が付きまとうものの、なお重要な読み解きの可能性を豊かに内包している。


目次

■北からの蒙古襲来 中村和之(なかむら かずゆき)
「北からの蒙古襲来」とはなにか/元のサハリン侵攻とアイヌ/元からみた「北からの蒙古襲来」/宋・元代の日本認識/アイヌにとっての「北からの蒙古襲来」/日本からみた「北からの蒙古襲来」/北の「倭冦的状況」の出現
■樺太アイヌの人々 村崎恭子(むらさき きょうこ)
はじめに/常呂の居住者たち/知床のおばあさん/ピウスツキ−蝋管レコード物語/たった一人の語りベ/いざサハリンへ/おわりに
■蝦夷地のアイヌ乙名(おとな) 川上 淳(かわかみ じゅん)
乙名とは/コタンコロクル/アイヌ社会の首長の出現/アイヌ社会の乙名の出現/蝦夷地が和人支配化される前の乙名/小使と惣乙名、脇乙名/幕府による役アイヌの掌握/幕末期の乙名/アイヌ史研究
■夷酋列像(いしゅうれつぞう)−痛恨の肖像 井上研一郎(いのうえ けんいちろう)
はじめに/〈夷酋列像〉はなぜ描かれたか/二組あった〈夷酋列像〉/〈夷酋列像〉の全貌を伝える模写作品/像主をどう評価するか/〈夷酋列像〉は装飾過多/「夷風性」の評価/おわりに
■江戸時代の北方史−「鎖国」の中の北方地域 榎森 進(えもり すすむ)
対外関係の「四つの窓口」と日本型華夷秩序/北東アジア世界と連動していた北方地域/揺れる「蝦夷地」の性格/四つの名称を持つ島/クリル諸島とカムチャッカ/周辺国家の狭間で
■近世アイヌの集落と家族構成 遠藤匡俊(えんどう まさとし)
はじめに/アイヌの集落/集落の位置と構成/集落レベルの流動性/集落レベルの流動性のメカニズム/三石場所と静内場所/アイヌの家族/家レベルの流動性とそのメカニズム/集団の流動性の意味/むすび
■アイヌの風俗を描いた絵師たち 新明英仁(しんみょう ひでひと)
はじめに/絵師たちとその系譜/在住型と訪問型の絵師たち/主要な作品について/アイヌ風俗画の位置づけ
■開拓とアイヌ民族 榎森 進(えもり すすむ)
旧「蝦夷地」全域を日本国の領域に編入/アイヌ民族の日本国民への編入と新たな差別/漁業・狩猟権を奪われたアイヌ民族/土地も奪われる/開拓と差別の嵐の中で
■アイヌの送り儀礼 秋野茂樹(あきの しげき)
はじめに/イオマンテ−霊送りの概念/その他の霊送り/イオマンテの実際(準備、前祭、本祭、後祭)/おわりに
■アイヌの一生 安田千夏(やすだ ちか)
幼年期/青年期/成人男性の暮らし/成人女性の暮らし/人生の終焉/あの世での暮らし/おわりに
■アイヌの衣服 児玉マリ(こだま まり)
はじめに/獣皮衣(獣皮衣、魚皮衣、鳥羽衣)/植物衣(樹皮衣、草皮衣)/木綿衣/おわりに
■アイヌの伝統家屋チセ 内田祐一(うちだ ゆういち)
はじめに/チセの外観/チセの内部/さまざまな附属施設/チセの向く方向/暮らしの場としてのチセ/おわりに
■博物館が語るアイヌの生活用具 出利葉浩司(でりは こうじ)
はじめに/博物館とアイヌ民族資料/博覧会としての「大作」、みやげものとしての「民具」/在北米博物館におけるアイヌ資料の調査/コレクションは何を物語るのか/変化するアイヌ社会とコレクションへの影響
■アイヌの狩猟 内田祐一(うちだ ゆういち)
はじめに/陸獣狩猟の概略/エゾシカ猟/クマ猟/罠猟(仕掛弓、輪状罠、箱罠、弾き罠、落とし罠、挟み罠)/その他の猟(ワシ猟、海獣猟)/猟に関わる伝承/おわりに
■アイヌと植物 福岡イト子(ふくおか いとこ)
はじめに/春から夏へ(食用・薬用となるもの、衣服の材料となるもの、家材、舟材にするもの)/夏から秋へ(食用・薬用となる植物、敷きもの・男の子の遊び道具、矢毒に用いるもの)/秋から冬へ/おわりに
■アイヌの食事 秋野茂樹(あきの しげき)
はじめに/食糧の採取・捕獲/貯蔵の方法/日常食のメニュー/儀礼や祝祭など、特別な日の料理/旧記に見るアイヌの食事/場所請負制下のアイヌ/おわりに
■アイヌの口承文芸 中川 裕(なかがわ ひろし)
アイヌ文学の四つの分類(言葉遊び、唱えごと、歌、語りもの)/神謡/散文説話/英雄叙事詩
■アイヌの芸能−和風化のプロセス 谷本一之(たにもと かずゆき)
アイヌの歌と踊り/現在に伝承される鯨踊り/二つのメノコ踊り図/芸能化する儀礼/和人社会の中のアイヌ文化
■外国人のみたアイヌ 青柳信克(あおやぎ のぶかつ)
はじめに/アイヌの人びとは白色人種/アメリカン・インディアンとアイヌの人びと/チセが変る/本州産品の流入/アイヌの人びとの生計/日本人移住者の増加/結びにかえて
■金田一京助とアイヌ語 児島恭子(こじま きょうこ)
はじめに/アイヌ語を選ぶということ/心の小道/内地のアイヌ語地名/命をかけたユーカラ集の刊行/落ち穂拾い/金田一アイヌ学
■ロシアのアイヌ資料−サンクトペテルブルグ編 荻原眞子(おぎはら しんこ)
はじめに/「人類学民族学博物館」所蔵、千島アイヌの資料(コレクションMAE820、MAE810、MAE809)/豊富な模型資料/「イナウ」と記載された資料/子供の衣類
■知里真志保(ちり ましほ)とその家族 萩中美枝(はぎなか みえ)
はじめに/「わたしのM……」/知里家の催し物/真の淑女/母の旅立ち/真志保との出会い/アポイ岳に登る/わすれもの/うしろ姿/手渡されたノート/おわりに
■日本人とアイヌ民族の起源 尾本恵市(おもと けいいち)
アイヌ白人説/人種という概念、民族という概念/日本人の起源/先住民族の人権/
■対談「アイヌ文化と東北の文化」菅野 茂(かやの しげる)、赤坂憲雄(あかさか のりお)
アイヌ研究の限界/「送り」と「供養」/自然の利息
■現在のアイヌ民族が抱える諸問題−「アイヌの歴史と文化2」の刊行にあたって−
 榎森 進(えもり すすむ)