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防災力! 宮城県沖地震に備える
大竹政和 監修(日本地震学会会長)
商品の詳細
書評
『地震対策モデルの構築』
評者 岡田義光
地震ジャーナル 第39号(2005年6月号)掲載

  国の地震調査研究推進本部は、この10年、日本の周辺の海域で発生する地震および活断層で発生する地震について、長期的な地震発生確率を見積もる作業を進めてきた。平成16年度末にひととおりの評価作業は終了したが、この結果、周辺海域を含めたわが国とその周辺でもっとも高い地震発生の危険性を指南されたのが、宮城県沖である。今後30年以内の地震発生確率は実に99%とされ、近いうちに確実にやってくるものと覚悟せねばならない。このような危機感に裏打ちされて、宮城県に関係する地震研究者や防災関係機関の総力を挙げて、きたるべき宮城県沖地震への備えを説いたのが本書である。
  全体はA4判よりやや小さいサイズで214ページと、この種の書物としてはボリュームたっぷりの感がある。目次に続き、約10ページにわたって宮城県沖地震の被害想定結果がカラーの地図と表を用いてわかり易く示されている。これに続く本文は、知識編、備え編、対応編に大別され、そのページ数配分はおよそ3:7:2となっている。知識編には「地震研修の最前線から」との副題がそえられ、地震のメカニズム(大竹)、津波の被害と避難(今村)、地震予知研究の新展開(長谷川)地震の揺れと被害の関係(源栄)、災害の軽減に向けて(大竹)の5章が設けられている。各章は独立して読めるものの、通して読むとプレート理論の解説の重複などがやや気になる。なお、各章の扉には執筆者の大きなグラビア写真が載せられており、印象的である。
  備え編はさらに3つに分けられている。まず「1.暮らし:ライフラインの防災対策」では、電気・水道・ガス・道路・河川・港湾・地下鉄・高速道路・固定電話・携帯電話・テレビ・ラジオ・銀行・郵政公社・消防の各担当事業者が地震に備えてどのような対策を進めているのかが詳しく説明される。次いで「2.住まい:地震に強い住まいづくり」では、震災に強い住まいと地盤、免震・制震技術の現代、地震保険の問題が取り上げられ、大震災でいつも問題となる住居の耐震化が詳しく解説される。さらに「3.地域:地域と産学官の取り組み」では、緊急地震速報の利活用、次世代型津波監視システムといった近未来の防災対策や、地域と連結した企業防災の取り組みなどが紹介される。関係機関によって実に様々な取り組みが進められていることを知り、読者は意を強くするであろう。
  最後の対応編では、「身近な備え、総チェック」という副題が添えられ、チェックシートを用いて地震に対する各自の備えや、我が家の耐震診断が行えるようになっている。また巻末には、宮城県各市町村が実施している防災支援対策、地震に遭遇した際の心構え、災害時のボランティア活動、過去の地震災害からの教訓などが収められている。
  盛り沢山の内容ではあるが、このように、1冊の本で地震の基礎から防災対策、そして個人の備えまでを組織的に網羅している書物は少ない。対象は宮城県沖地震となっているが、防災への備えは全国に共通する部分が多く、宮城県民に限らず全国の一般市民にとって地震対策に閉じこもりがちな地震研究者には、社会との関わりを確認するために有益な書物であり、地方自治体や公共機関の関係者には、防災対策を概観する良い参考書として、さらに、このような書物を作ること自体の意義を確かめる見本として、是非一読をお勧めしたい。
<創堂舎、2005年、214項、2,400円>



『東北の本棚』
震災被害最小限に
地震学会の大竹会長ら 知識や対応解説
河北新報2005.4.18掲載

 新潟県中越、スマトラ沖、福岡県西方沖と、大地震が続く。宮城県沖地震も、今後三十年以内の発生確率が99%とされる。日本地震学会会長の大竹政和東北大名誉教授が監修した「防災力!宮城県沖地震に備える」は、「震災の規模は人の力で軽減することができる」と訴える。
 「知識編」「備え編」「対応編」の三つのテーマで構成する。
 知識編は、大竹氏をはじめ東北大の今村文彦、長谷川昭、源栄正人教授ら地震学の研究者四人が行った講演内容に、資料や説明を追加してまとめた。地震や津波発生のメカニズム、予知研究の現状について分かりやすく解説している。
 備え編は、被災した場合、私たちはどのような行動をとればよいのか。電気、水道、ガスなどのライフラインはどのように復旧されるのか。震災に強い住居の構造、地域や産官学の取り組みを紹介。対応編は、過去の震災から教訓を学び、必要な備えや家庭での確認事項を総点検する。
 地震学の専門的な知識でも、図解や写真で分かりやすく説明。最新の耐震・免震・制震技術や行政による耐震改修の助成金についても取り上げられ、住宅の新築やリフォームに役立ちそうだ。



『なまずの知恵・Vol.41』
地震の本−対策や研究最前線紹介
讀賣新聞2005.3.8掲載

今週のポイント
1)宮城県沖地震への備えを学ぶのに適した本が出版された。
2)研究の最前線や防災対策などを紹介。
3)県内市町村別の支援策のリストもある。
 宮城県沖地震で、どのような被害が発生し、どう備えたらいいのだろうか。そんな問いに明快に答えてくれる本が出版された。その名もズバリ、「防災力!宮城県沖地震に備える」(定価2520円)。
 仙台市青葉区にある創童舎が出版し、日本地震学会長の大竹政和・東北大名誉教授が監修した。
 2003年10〜12月に、NHK文化センター仙台総支社で行われた同地震に対する特別講座の講演内容を採録し、地震や津波研究の最前線がよく分かる。
 電気やガス、電話などライフライン(生活物資補給路)事業者を始め、銀行、郵政公社、放送局、地下鉄の防災対策など、同地震について多角的に取材した結果を紹介している。
 また、自宅(木造住宅)の簡易耐震診断を、誰でも手軽にできるよう耐震診断の問診票を掲載。県内各市町村で耐震診断やブロック塀に除去、家具の転倒防止策などについて支援策の有無を一覧にしたリストも掲載している。県民にとって役立つ情報が満載だ。
 3月上旬から仙台市青葉区の丸善仙台アエル店でも、地震や地震防災に関する本を紹介するコーナーなど3か所に置かれている。
 同店では一昨年に本県で相次いだ地震以降、地震や地震防災に関する書籍を、目立つよう平積みして販売している。その理由を和書専門書兼洋書接客インストラクターの福田久雄チーフは「来店されたお客様に関心を持っていただきたいため」と説明する。
 源栄正人・東北大教授監修で、応用地質・宮城県沖地震図書編集委員会編著の「宮城県沖地震の再来に備えよ」(河北新報出版センター)もよく売れているという。